正常性バイアス
正常性バイアス(せいじょうせいバイアス、英: Normalcy bias)とは、認知バイアスの一種。社会心理学、災害心理学などで使用されている心理学用語で、自分にとって都合の悪い情報を無視したり過小評価したりするという認知の特性のこと。 自然災害や火事、事故、事件などといった自分にとって何らかの被害が予想される状況下にあっても、それを正常な日常生活の延長上の出来事として捉えてしまい、都合の悪い情報を無視したり、「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」「まだ大丈夫」などと過小評価するなどして、逃げ遅れの原因となる。「正常化の偏見」、「恒常性バイアス」とも言う。[1]
概要
人間の心は、予期せぬ出来事に対して、ある程度「鈍感」にできている。日々の生活の中で生じる予期せぬ変化や新しい事象に、心が過剰に反応して疲弊しないために必要なはたらきで、ある程度の限界までは、正常の範囲として処理する心のメカニズムが備わっていると考えられる。 古い防災の常識では、災害に直面した人々の多くは、たやすくパニックに陥ってしまうものと信じられており、災害に関する情報を群衆にありのまま伝えて避難を急かすようなことは、かえって避難や救助の妨げになると考えられてきた。ところが後世の研究では、実際にパニックが起こるのは希なケースであるとされ、むしろ災害に直面した人々がただちに避難行動を取ろうとしない原因の一つとして、正常性バイアスなどの心の作用が注目されている。[1]