自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の2つに分かれています。この2つはそれぞれ反対の働きをもっていて、交感神経は主に体を活発に動かす時に、一方、副交感神経は主に体を休める時に働きます。例えば、心臓の鼓動を速くするのは交感神経の働きで、ゆっくりさせるのは副交感神経の働きです。その他、血圧を上げたり瞳孔(ひとみ)を大きくしたりするのは交感神経、血圧を下げたり、ひとみを小さくしたりするのは副交感神経によるものです。このように交感神経と副交感神経は、互いにバランスを取り合って、体を調節しています。
自律神経が乱れる原因
自律神経の乱れを引き起こす原因には様々なものがありますが、中でも「ストレス」と「生活習慣の乱れ」が大きく影響しているといわれます。
ストレスが加わると、まずは交感神経が刺激され、体が活発に動く状態が続きます。通常はその後、適当なタイミングで副交感神経に切り替わり、体が休まっていきますが、強いストレスにさらされた状態が続くと、副交感神経への切り替わりがうまくできなくなり、自律神経に乱れが生じてしまいます。
生活習慣の乱れも同様です。ヒトの体には体内時計が備わっていて、ほぼ1日(24時間)周期で体内に変化が起きています。しかし、睡眠不足などで眠れなかったり、昼夜逆転の生活をしていたりすると体内時計が徐々に狂い、自律神経も乱れさせてしまいます。例えば朝、起きてもだるさが取れない、やる気が出ない、集中できないという場合、副交感神経から交感神経への切り替わりがうまくいかないため、こうした影響が出ていることが考えられます。
自律神経を整えるために、生活リズムから整えよう
眠れなくても昼夜逆転NG!朝日を浴びて体内時計をリセット
自律神経を整えるために、睡眠のリズムを整えましょう。体内時計のリズムは約24時間で刻まれていて、これが乱れると夜眠れなくなったり、朝起きられなくなったりしてしまいます。乱れた体内時計は、朝日を浴びることでリセットされます。朝起きたらカーテンを開けて朝日を浴びる習慣をつけておきましょう。
なお、夜勤があるお仕事の場合、先に日勤を経験してから夜勤にシフトするというように、徐々に開始時間を遅くできるようにしていけると、自律神経への影響が少なく済むと考えられています。
手軽なストレッチで筋肉をほぐす
血流が悪くなることも自律神経に影響を与えます。仕事中は座りっぱなしであまり動かないという場合、ストレッチをして筋肉をほぐしたり、血流をよくしたりするのも自律神経を整えるのに効果的です。例えば、体の前方で腕を十字に交差させて行う肩のストレッチや、片手で頭を引き寄せるようにして行う首のストレッチなどは座ったままでも気軽にできて、体も気分もスッキリします(下記参照)。
ぬるめのお風呂に浸かり、副交感神経を優位に
湯船に浸かってリラックスすることも、自律神経を整えるのに役立ちます。「眠れない」といった睡眠の悩みを抱えている方は、リラックス効果のあるアロマやハーブを使うのが、特におすすめです。副交感神経が優位になり、眠りにつきやすくなります。
アロマの精油を使う場合は、浴槽に張ったぬるめのお湯に2~3滴ほど精油を垂らし、香りを感じながらゆったりと入浴しましょう。ラベンダーやサイプレスなどの精油を使うと疲れの回復効果が期待できます。
ハーブを使用する場合は、ドライハーブを煮出したハーブ液を湯船に加える方法が、よりハーブの香りを感じられるのでおすすめです。こちらもお湯の温度はぬるめにして、リンデンやジャーマンカモミールなどのハーブを使うとよいでしょう。
「香り」を生活の中に活かしてリラックス
入浴中だけでなく、生活の中に香りを取り入れるのもストレス解消に効果的です。ハーブティーやアロマを使い、心を落ち着けていきましょう。
香りを上手に活かすには、シーンによって使い分けるのもおすすめです。例えば、朝は爽快感のあるペパーミントやレモングラスなどを使ったハーブティーを楽しみ、夜は甘くやわらかなジャーマンカモミール、リンデンなどを使ったハーブティーでリラックスするとよいでしょう。
アロマを楽しむ場合、リビングにはレモン、グレープフルーツなどの柑橘系やローズマリーの精油を規定量で薄めてスプレーにして使うと香りが広がり、リラックス効果に加えて、スッキリした気分を味わうことができます。寝室に使う場合はラベンダー、クラリセージ、オレンジスイートなどの精油を、お湯ではなく水に数滴垂らすなどして、ほのかな芳香浴を楽しみましょう。なお、小さなお子さんがいる場合は、精油の入った水をお子さんが誤って口にしないよう注意しておきましょう。
寝る前にはスマホを見ない
スマホやパソコンの画面から出るブルーライトは、目に見える光の波長の中で体内時計を遅らせる効果が最も強い光だといわれています。寝る直前までスマホを見ていると睡眠の妨げになる可能性があるため、寝る前には見ないようにすることが大切です。またスマホからはブルーライトの光だけでなく、たくさんの情報も入ってきます。寝る前にそうした大量の情報を見てしまうと、興奮して寝付きにくくなります。また、スマホがそばにあると着信音や振動で眠りが浅くなります。睡眠の質の低下につながるので、寝る前にスマホを見るのを避けるだけでなく、寝床のそばにスマホを置くのもやめることをおすすめします。
自律神経を整える、食べ物&ハーブ
交感神経優位の場合には、ハーブティー
パッションフラワー
パッションフラワーは精神を安定させ、安眠に導く作用をもつといわれるハーブです。寝つきが悪い人、ちょっとした音や光で目が覚めてしまうという人におすすめです。ハーブティーにすると、くせのない草木の香りが心地よい味わいをもたらしてくれます。
リンデン
リンデンは高ぶった気持ちを鎮め、体を温めて緊張でこわばった心や体をほぐす作用があるといわれています。ハーブティーにすると上品で甘い香りがします。寝る前に飲むと、ストレスや不安を抑えてくれるため、安眠しやすくなります。
ジャーマンカモミール
ジャーマンカモミールは高いリラックス効果があるとされる、代表的な家庭用ハーブです。ストレスや不安、怒りなどを落ち着かせる他、内臓機能も整えるといわれています。カモミールティーはスーパーなどでもティーバッグとして売られているほど一般的で、甘みがあって飲みやすいため、ハーブ初心者にもおすすめです。
レモンバーム
レモンバームは悲しみや心配を和らげ、気持ちを明るくするハーブとして古くから用いられています。先々に不安がある人やストレスの影響で月経のリズムが乱れやすい人に効果的です。ハーブティーにすると酸味がなく、ふんわりとした後味を楽しめます。
交感神経を活性化するには、自律神経を整える食べ物
香味野菜
香味野菜とは香りを添え、料理の味を引き立てるための野菜のことです。ショウガ、玉ねぎ、にんにく、ニラなど、辛みやパンチのある味わいの野菜が多く、食べると辛み成分が血流を促し、交感神経を活性化させていきます。料理のトッピングや隠し味として加えるなど、手軽に取り入れていきましょう。
ビタミンEが豊富な食べ物
ビタミンEは手足の先端にあるような細い血管を拡張し、血流を促す作用があるといわれています。ビタミンEが豊富な食べ物は、手足の冷えが気になる人にはおすすめです。ビタミンEは、うなぎ、ナッツ類、グレープシードオイル、ひまわり油、米油などに多く含まれます。
スパイスや生薬
スパイスや漢方生薬も交感神経を活性化させるのに役立ちます。巡りをよくして、血圧の低下にも役立つ「ヒハツ」、体と心を温める効果がある「ナツメ」、血流を改善する効果があるクロセチンを含む「クチナシ(山梔子:サンシシ)」などを料理に振りかけたり、スープに入れたりして活用しましょう。
参考資料
- 自律神経を整えるには。セルフケアを始めよう│ウェルネスコラム│オリナス(orinasu)│大正製薬 https://brand.taisho.co.jp/orinasu/wellness/jiritsu001.html
- 自律神経を整える、食べ物&ハーブのチカラ│ウェルネスコラム│オリナス(orinasu)│大正製薬 https://brand.taisho.co.jp/orinasu/wellness/jiritsu002.html